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VCO

Voltage Controlled Oscilator (基本になる音を発振する装置)

 再度おさらいです。VCOは鍵盤から出されたCV信号とGATE信号のうち、CV信号を受け取ります。
 VCOはどの鍵盤が押されたかという情報をリアルタイムにCVで受け取ります。GATEは関係ないので、鍵盤から手が離れているかどうかはノーチェックです。
 通常、鍵盤は鍵盤から指が離れても最後に押した鍵盤のCV電圧を次に鍵盤が押されるまでの間ずっと出し続けています。鍵盤から手を離してもCVは出っぱなし、ということです。またその信号を受け取ったVCOも音は出っぱなしです。音自体のON/OFFはこの後に送られる(GATEを受け取っている)VCAで行いますから、VCOからはそんなことおかまいなしにずっと音が出続けていると考えて差し支えありません。ただしCVの電圧が変われば当然VCOから出る音の高さも変わります。CVの電圧は鍵盤を押した瞬間に変化しますから、VCOもそれに素早く反応するように作られているわけです(ちなみにCVが切れるといくらVCOが出っぱなしでも音は出ませんから、CVも出っぱなしになっていないといけないわけですが)。

 VCOには大きく分けて2つの役割があり、ひとつは、音の発信源として素材となる、これから加工するための単純な音を出すこと、 もう一つは前述の通り音程(=ピッチ)を調整することです。 シンセサイザーではいったんVCO から出た音のピッチを別の装置で変化させる、という概念がありません(それには技術的な問題もありました)。ですから音の発振源であるVCOで最初から音の高さも決めておくことが必要です。
 また基本的な音色をあらかじめ決めておくのも、今時のデジタル・シンセサイザーと同じです。
 最近のデジタルものではオシレーターの基本的な音色は数百から数千もあり、サンプリング音を音源に指定することができるのもあたりまえです。しかし80年代前半までに作られたアナログ・シンセサイザーではせいぜい数種類から選ぶのが普通といえます。
 またVCOという名前からも想像できるとおり、VCOはピッチがボルテージ・コントロールド、つまり電圧で制御されています。CVも電圧ですから、さっきの話のとおりです。ただ、電圧(CV)で変化させるものはなにも鍵盤に応じた音程の音をVCOに出させるためだけではありません。ビブラートをかけたり、基本的な音色を変化させたい場合など、いろんな動作に変調をかけたい場合があります。そんな時に鍵盤からではなく、別な回路から発したCVをVCOに入力したりもします。またこうやってVCOや他のモジュールにCVのような電圧をかけて変調させることをモジュレーションといいます。この言葉はこれから何回も出てきます。

機能の説明

EXT PW MOD
パルス波の幅をモジュレーションするための信号を入力する。

MANUAL
パルス波の幅を手動で調整する場合に使用。

VCO OUT
VCOのオーディオ出力。通常はVCFのSIG INと接続。下にある波形を選ぶスイッチで選んだ波形が出力される。

RANGE
ピッチのオクターブの切り替え。

PITCH
可変式ピッチ調整。チューニングにも利用する。

SYNC OUT / IN
オシレーターシンク。2つのVCOを用意し、そのOUTともう一つのINを結線する。OUTを使った方がMASTER、INを使った方がSLAVEとなる。IN側としてVCOを動かしている場合にはWEAK / STRONGスイッチが効力を発揮し、オシレーターシンクの利きの強さを2つから選べる。

MOD IN
ピッチのモジュレーションをする信号を入力する。LFOをここに差したらビブラート効果が得られる。左端の1つだけ、何も接続していなければ裏パネルから入ってきたキーボードのCV信号を受ける仕組み。

WAVEFORM

まずVCOで設定しなければならないのがウエーブフォーム、すなわち波形です。これを切り替えると「基本的な音色」が切り替わります。
つまり波形の切り替えは音色の切り替えのことです。音色の違いは倍音の含み方の違いだという話は既にお話ししました。しかしここではもう少し突っ込んだ倍音の話をしておくべきでしょう。
 通常、シンセサイザーで使われる波形には以下のようなものがあります。
  1. SINE(サイン波)
  2. TRIANGLE(三角波)
  3. SAW TOOTH(鋸歯波、のこぎり波)
  4. PULSE(パルス波)
  5. NOISE(ノイズ)

これらの波形はスイッチで切り替えられるようになっているのが普通ですが、この全てがどんなシンセサイザーにも搭載されているとは限りません。しかし一般的にどんなに波形の種類が少ない機種でも3の「のこぎり波」と4の「パルス波」の2つは付いています。最低このどちらかを選ぶようになっているわけですが、上の5つとも付いている機種もありますし、もっと違う波形が付いているものもあります。
またシンセサイザーでは機種によって、同時に混ぜたりして使えるようになっているものもあります。

波形を三角波→のこぎり波→パルス→ノイズと切り替えてみた音(クリックすると音が聞こえます)。

  • SINE 
     まずサイン波ですが、これは全く倍音を含まない、純粋な音です。要するに基音だけの音ですから、かなり味気ない音色のため、単体でVCOに使われることはあまりなく、他の音を補う目的で使われます。電話の受話器を取ったときに聞こえてくるあの音です。Drum n' BassやMiami Bassのベース音や時報の音などがこれです。サイン波を付けていない機種も多くあります。

  • TRIANGLE
     三角波はサイン波と違って倍音を持った波形です。ただしそのほかの波形に比べれば倍音の量は少ない方です。あまり自己主張の少ない波形ですから、大人しい音や、別の波形に混ぜて隠し味として使ったりします。
    基本的にどの波形も周波数の違うサイン波の合成と言えます。この三角波もそうです。

  • SAW TOOTH
    SAW TOOTH=鋸歯波(別名のこぎり波)は何かと重宝する、使用頻度の高いポピュラーな波形です。三角波と倍音の含み方は多少似ていますが、もっと多くの倍音を持っていて、加工して使うのに向いています。ベースにも向いていますし、ストリングスにも使えます。もっとも代表的な波形です。

  • PULSE
     パルス波はのこぎり波に並ぶ代表的な波形で、ちょっとクセのある音です。鋸歯波や三角波が偶数倍の倍音を持っているのに対し、基音に対して奇数倍(3倍、5倍...)の倍音を多く含んでいます。理屈はいいのですが、音としてはクラリネットなどに近い、SAW TOOTHとは違うニュアンスの音がします。
    パルス波は角張った波形をしていますが、多くのシンセサイザーでは「パルス幅」と呼ばれるものを可変で調整できるようにしてあり、パルス波自体の倍音の含み方、すなわち音色の聞こえ方そのものを変化させることができます。
     パルス幅というのは波形のてっぺんと底辺の部分に当たる比率のことで、英語でPULSE WIDTH(パルス・ウィズ)と呼びます。パルス・ウィズはその幅を上下のパーセンテージで表し、上下の幅が均等なもの(50%)をとくにSQUARE(矩形波)と呼ぶこともあります。 50%を境にして0%あるいは100%へ近づくにつれ、音が細くなり、0か100に達したところで音は消滅します。0%、100%、いずれにしても音色の変化は同じで、(つまり10%と90%、20%と80%、30%と70%はそれぞれ同じ音なのです)これは波形の天地が逆相になっているだけのことです(耳にとっては同じ音)。ですからシンセサイザーでは0%〜50%か、50%〜100%かのどちらかしか可変幅をとっていないのが普通です(そうでないのもありますが)。
    また、このパルス・ウィズをCVなどを使って外部からコントロールできる機種もあります。これをPWM(パルス・ウィズ・モジュレーション)といい、音に厚みを持たせる効果があります。(上の写真ではEXT PW MODと書かれている入力端子から変調信号を入力してパルス幅を変化させることが出来ます。詳細は下のPWMの欄を見て下さい)
     パルス幅を変化させた音
  • NOISE
     ノイズは基音はもとより、倍音すべてのピッチがでたらめに混ざり合った音を言います。ですから、ドレミのような安定した「音の高さ」はありません。VCOの波形の中で唯一CVの情報を受け取らない波形です。本当ならば、ノイズは「ノイズ・ジェネレーター」というVCOとは別のモジュールで作り出される波形ですが、コンパクト化されたシンセサイザーのほとんどが、そのノイズ・ジェネレーターをVCOに組み込み、他の波形と同様に選べるようになっています。 また、このピッチのないノイズにもいくつかの種類があります。通常、何も書かずにNOISEと書かれているものはWHITE NOISE(サーというノイズ)、もっとざらざらしたゴーというものをPINK NOISEといいます。PINK NOISEがついているのはマニアックな機種が多く、通常はWHITE NOISEだけです。変わりダネとしてBLUE NOISE やRED NOISEなんてのもありますが、結局これも倍音の比率を変えただけのものです。

これはKORG MS-20のもの。左から三角波、のこぎり波、パルス波、ホワイトノイズ。ノイズもWAVE FORMの中で選択できるようになっている。
RANGE

 レンジはメーカーによってSCALEと呼ばれたり、OCTAVEとかと呼ばれたりしています。このスイッチは要するにオクターブの切り替えです。通常のシンセサイザーは、せいぜい49鍵盤か61鍵盤しかキーボードがありません。ベースからピッコロのような高い音まで作り出せるシンセサイザーではとうていフォローし切れていません。そこでレンジを切り替えます。トランスポーズです。パネルに打ってある数字は64' 32' 16' 8' 4' 2'の5つくらいでしょう。64'や、もしかすると32'も機種によってはサポートしていないものがあります(鍵盤がたくさん付いているとそんなに必要ないわけです)。この数字が小さくなるほどオクターブが上がり、鍵盤が左へシフトしたようになってより高い音が出ます。標準のレンジは8'で、ベース音を作るときは16'や32'を設定します。
 また、RANGEは一部の機種には最初からありません。そのような場合はたいていピッチが可変式になっているものです。Prophet 5などはこの可変式をとっていますが、つまみを回すと半音階ずつ段階的に変化するので、チューニングがやりやすいほうです。しかしArp Odysseyなどのように、段階的に変化しない連続可変タイプでは、別にチューナーを持っていないと使いにくいでしょう。

 オクターブを切り替えてみた音。

PITCH(TUNE)

VCOではオクターブをレンジで決めると次はこのPITCHつまみでチューニングを微調整します。PITCHはオクターブよりもっと小さな単位でピッチを可変させることができるので、微妙なチューニングや、2つのVCOを3度や5度でハモらせるときなどにも使えます。
モジュール型でないシンセサイザーにはPITCH以外にMASTER TUNEが設けられているかもしれません。PITCHはPITCHと書かれていることもありますが、機能は同じです。機種によって1オクターブ以上変えられたり、幅はいろいろです。minimoogにはチューニング用の440Hzの発振器がついているので、そういう機種ではこれを音叉代わりにして真ん中の「ラ」の鍵盤を押しながらこのTUNEを回せばチューニングできます(上記の発振器はどちらもあてにならないですが、ないよりはずっとましです)。ボタン一発で自動チューニングしてくれる機種もいくつかあります。

MOD IN

ここでいうMODつまみはモジュレーションの入力プラグから入ってきたコントロール信号でどのくらいピッチを変化させるか、その変化の量を調整するつまみです。モジュレーションについてはあとで詳しく説明します。

PWM

PWMとはPulse Width Modulation(パルス・ウィズ・モジュレーション=パルス幅変調)の略です(PULSEを参照)。Pulse Widthつまみを手動で動かすとパルス波の幅が変わって音色が変わりましたが、これを外部CV信号でコントロールするためのつまみです。コントロールのためのCV(電圧)はPWMプラグから入力し、このPWMつまみで変化量を調整します。このPWMはどのシンセサイザーにも付いている機能ではありませんが、音に厚みを出すためには効果的です。

SYNC

 シンクは一部のシンセサイザーに付いている機能です。シンクは2つ以上のVCOのピッチをぴったりと強制的にシンクロ(同期)させる機能です。ぴったりとピッチが合うことで2つのVCOの音が1つに聞こえます。2つのVCOがある場合、どちらかがMaster(親分)で、どちらかがSlave(子分)になっています。スレーブ側がマスターのピッチに強制的に合わせます。また、スレーブ側のピッチを故意にずらすことで、緊張感のある新しい倍音を作り出すことができます。クラフトワークの「Neon Lights」という曲で「キュルルルーン!」とピッチがダウンしていく効果音、あれがシンクの効果的な利用法で作った音です(ダフト・パンクやマニー・マークもよく使ってますね)。

ではVCFに進んでみましょう。


SCALEと書かれたKORG MS-20のつまみ